地下空港10周年記念対談 『轟きの丘の上』 第二弾 女優・川根有子

地下空港10周年記念対談 『轟きの丘の上』 第二弾 女優・川根有子

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地下空港結成十周年記念となる九月の新作『轟きの山脈』の上演に先立ち、
重要人物にスポットライトを当てた特別対談シリーズ『轟きの丘の上』。
主宰・伊藤靖朗に続く第二弾は、今回地下空港初出演となる女優・川根有子。


伊藤靖朗がその演技に惚れ込み、尊敬するベテラン女優である川根氏が
その演技のルーツを語ります。



(聞き手:伊藤靖朗)


<<『轟きの丘の上』 第一弾 主宰・伊藤靖朗>>はこちら

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ー芝居も仏像も、人の心を癒すもの。ー

ヤ 今日は宜しくお願いします。
川 こちらこそ宜しくお願いします。
ヤ もう本番まで一ヶ月を切りましたが、稽古はどうですか?
川 今回は初めて一緒にやる役者さんたちばかりなのですが、みんなホントに若い!笑 若さと希望にあふれてるって感じがします。
  私一人おばちゃんで大丈夫かなあと思いましたけど、エネルギーをもらいながら楽しくやってます。
ヤ いやいや!こちらこそ川根さんにパワーを頂いてますよ!!笑 そこで今日はまず、川根さんが芝居を始めたきっかけについて
  お伺いしたいのですが、最初に舞台に立たれたのはいつだったんですか?
川 大学で演劇のサークルに入ったのがきっかけです。でも、もちろん芝居は好きだったんですが、決して芝居一筋でやっていたと
  いう感じではなくて、色んなことに興味がありましたね。
ヤ 例えばどんなことに?
川 年に一回、NPOのボランティアで海外に行ったりもしてました。フィリピンとかバングラデシュとか。
ヤ へぇ!!あ、でも、今回川根さんに出演して頂けることになって初めにお話させて頂いた時に、実はファイナンシャルプランナー
  の資格をお持ちで、今金融関係のお仕事もなさってるって聞いて、すごくびっくりしたんですよね。舞台上であれだけ激しく感情
  を揺さぶるような演技をなさっている方が、経済の仕事をしているの?!って。
川 欲張りなんですよ、私。笑 最近はもっぱら仏教にはまっていて、こないだも禅寺に修行に行ってきました。そうそう!もともと
  は私、仏像の彫り師になりたくて、高校のときには仏師の教室にも通ってたんですよ。弥勒菩薩を自分で彫ったりしてました。
  おじいちゃんたちに混じって。笑
ヤ それはすごいですね・・・!きっかけはなんだったんですか?
川 きっかけは、『火の鳥・鳳凰編』に出てくる我王や、円空の仏像展を見に行って、すっかり魅せられてしまって。全国を回って
  仏像を作り、それが人々の心を癒していくっていうところにとても惹かれました。なんというか、、、芝居をやってるのも同じ
  感覚なんです。自分が何かやって、観てくれる人が少しでも元気になってくれたらいいなって。自分の中では、芝居も彫り師も、
  実はあまり変わらない気がします。

ヤ なるほど。そこから実際に、舞台活動を続けて行こうと思われたのはいつ頃だったんですか?
川 さっき少しお話しましたけど、大学時代に海外ボランティアでフィリピンに行ったんです。マニラからバスで三日ほどかかる
  山奥の村で、文明から遠く離れたところだったんですが、その村に映写機などの機材を持っていって、子供たちに映画を見せて
  あげようっていう活動がありました。でもその時、私は先に村に入って映画部隊が来るのを待っていたんですが、突然村の周辺に
  スコールが降って、機材を運び込めなくなってしまった。確かその時は『アラジン』だったかな。子供たちは映画が来るのを本当
  に楽しみにしていたので、すごくがっかりしているわけです。でも雨で機材が運べないからどうにもできない。そこでなんとかし
  て、この子達を楽しませることができないだろうかと思って、映画の代わりに、子供たちの前で一人で歌ったり踊ったりしたんで
  す。もうがむしゃらに。そうしたらみんなとても喜んでくれて。その時の子供たちの笑顔が忘れられなくて、今でも芝居を続けて
  いるんだと思います。

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ー舞台の上では無防備でいたい。ー

ヤ それは素敵な体験ですね。川根さんの演技は、なんというか、訴えかけることの範囲がすごく広いなって見てて思うんです。
  だから大きな劇場でも、客席の後ろまでバシッと存在やメッセージが伝わってくる。それはそういうルーツがあってこそなのかも
  しれないなって、今聞いてて思いました。
川 後ろの客席までってただ顔がでかいからじゃないの?笑
ヤ いやいや。笑
川 でもそれで得してます。笑
ヤ 例えば何か、演技をする上で意識していることって、あるんですか?
川 うーん、、、きれいにやるよりも、多少汚くても喜んでもらえるほうが嬉しいですね。高校のとき体操部だったんですけど、
  試合の時、すごい勢いで走って跳び箱を飛んだ後、勢い余って壁に激突。みんな笑っちゃうみたいなのが楽しかったりしたんで
  す。笑
ヤ あはは!そういうおもしろさは僕も、小さい頃からチャップリンが大好きだったのでよくわかります。笑 
川 人間って、強くてかっこいいとこ見せたいじゃないですか?でもあえて、自分の弱い部分を見せることで相手を油断させて
  笑わせる、っていうか。だから舞台の上では無防備でいたい、裸ん坊でいたいって思ってます。上手だった、よりも、すごかった
  って言われるような演技がしたいですね。
ヤ なるほど。なんというか、初めて川根さんの芝居を見たときに、「人間を見た」と思ったんですよね。
川 ありがとうございます。笑 さっきの仏像の話にもつながりますけど、自分の無様さを見せて、少しでも人に癒しを与えられた
  らって思います。癒しって言うと大げさですけど。笑

ヤ では、今回の作品やご自身の役についてはどうですか?
川 ネタバレになるといけないのであまり細かいことは言いませんが、とにかくスケールが大きい!何億年規模ですからね。笑 
  私、化石の役ですよ?人間じゃない。不思議な気分です。役作りで博物館に行ったのは初めてですよ。笑
ヤ そうですよね。笑
川 でも、5億年前の生き物も、もがきながらも必死に生きようとする本能は私たちと一緒だと思うし、そういう「生命のパワー」
  みたいなものを作品の中で表現できればと思います。
ヤ 期待しています!それでは、最後にお客様に向けて一言お願いします。
川 劇場で一緒に元気になろうぜ!不況なんてくそくらえ!!
ヤ ありがとうございました!!笑 頑張りましょう!!!



舞台上で、人一倍強烈な存在感を放つ川根有子。
その豊富な経験と信条に深く根ざした演技が
地下空港の世界の中で、どのように華開くのか?!

皆様是非!ご期待下さい!!



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女優  川根有子
聞き手 主宰・伊藤靖朗
写真  かとうちなつ


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